早いもので2010年がもう終わろうとしています。あっという間の1年だったなとはよく年の瀬に思うことですが、今年は特にその感が強いです。夢中で走り続けているうちに、いつの間にか1年が過ぎていた、そんな感じかもしれません。 それでも1年前のあの衝撃は遠い昔のことのようでもあり、随分長いこと夢を見続けているようなおかしな感覚もあって、よくわからなくなります。大変申し訳ないことに、多忙な日々に押し流されているうちにすっかり書くきっかけを失ってしまったSTAFF BLOGなのですが、『MUSIC』という極めて特別な作品をリリースしようと決意するに至る背景を、最後に少しだけ書いてみようと思います。 移籍が決定してまもないタイミングということもあって、私が志村君と過ごした時間は他のメンバーやスタッフと比べてとても短いものでした。新作に向けて積み重ねた様々な打ち合わせ、デモ聴き会、立ち会った少々の取材や撮影、ライブ後の楽屋。ひとつひとつの場面が今でも鮮明に思い出せるくらいにその記憶は限られていて、そのことがどうしようもなくくやしく悲しく、やるせなくもありました。想像を絶する大きな悲しみと喪失感に襲われているメンバーや近しいスタッフにかける言葉もなく、自分の無力さを思い知ったりもしました。 そんな中、ひとつだけちゃんと皆に伝えたかったことは、志村君が前を向いて、希望に燃えていたということでした。次の作品はとにかく凄い作品にする。これまではフジファブリックらしさは何かという枠にとらわれてしまっていたところもあったけれど、何も気にせず堂々と行きます、もう僕らは何をやってもフジファブリックになるんですと熱く語っていた志村君は、デモ聴き会にもどんどん曲を持ってきて、もっとこういう歌詞も聴いてみたいなぁ~と言うと即、がらっと違う歌詞をつけてきたり、長い間封印していたという「眠れぬ夜」のデモを持ってきては「この曲はストリングスを入れたい」とアレンジのイメージを語ったり。「会いに」の原曲デモを皆で聴いて「いいね!これまず録ってみよう!」となったときのはにかむような笑顔は本当に嬉しそうで、年内にアルバムの曲を全部作る!と宣言するくらい制作意欲に燃えていました。 そんな風にして残された楽曲の数々は、まぎれもなく志村君の作品であり分身であり、フジファブリックの最高傑作となるべきアルバムのために送り出された原石でした。これらの曲を生み出すためにあれほど全身全霊で取り組んでいた志村君を見て来た立場として、これらをアルバムとしてしっかり完成させて世に出すことはもはや使命だと思いました。そして志村君は「志村正彦」というソロアーティストではなく、「フジファブリック」という集合体の一員であり、その「フジファブリック」メンバー間のケミストリーと信頼感が物凄く深まっていたことは、私が接した限られた時間の中だけでも容易に察することが出来るものでした。志村君は単行本「東京、音楽、ロックンロール」やインタビューなどにもあるように、自分がスランプに陥った時に「フジファブリックが解散とかじゃなくて僕が脱退する」と本気で思っていたり、逆に曲作りが絶好調なときに「今、死ねねえなぁという使命感を感じる。生まれてきた素晴らしい曲達をお披露目出来ないのは困る」と言ったりしていて、そういう発言からも「フジファブリック」が無くなってしまうこと、自信を持って生み出された作品がお蔵入りになってしまうことを彼は決して望んでいないと思えたのかもしれません。 だから、志村君を最もよく知っているはずのメンバーやマネージャーの大森さんが「作品を形にしましょう」と言ってくれたときに、同じ思いでいることが物凄く嬉しかったし、第1回目の打ち合わせから「フジファブリックのニューアルバムとして全員が胸を張れるアルバムにする」というミッションが言葉にせずとも全員に刻まれている空気を感じて、身が引き締まる思いでした。志村君の意志を継いで、メンバーの力を結集して作品を完成させる。その強い思いがすべての逆境をのみこんで楽曲を進化させ、最終的に『MUSIC』という素晴らしい作品に結実したのだと思います。 ドラマ「モテキ」主題歌に決まった「夜明けのBEAT」は、監督も脚本も務める大根監督が聴いた瞬間「こんなにぴったりな曲はない。他の曲は聴く必要もない」と即決したというエピソードがあるのですが、ドラマで流れるこの曲がきっかけでフジファブリックを好きになった人がいたならば、志村君はきっと喜んでいるだろうな、こういう形で送り出すことが出来て本当に良かったな、と思います。 すでにお知らせしているように、この『MUSIC』スペシャルサイトのCOMMUNITYページにあるBBSが今年12月31日をもって新規投稿受付終了となります。サイトがオープンしてから約半年間もの間、絶えず書き込んでいただきありがとうございました。公式サイトからもなくなっていたBBSをあえてこの『MUSIC』スペシャルサイトに復活させたのは、まぎれもないニューアルバムだけれどすごく特別なアルバム、『MUSIC』を聴いた感想を自由に語れる場をオフィシャルに作りたいと思ったからです。その目的はもう十二分に果たせたかなと思います。 これからも、前へ向かって進んでいくフジファブリックを、変わらず支えていただけたら幸いです。
公式HPのMEDIA欄にも掲載していますが、『MUSIC』発売日の7/28(水)22:00~23:00、スペースシャワーTVにて「フジファブリックSPECIAL」がOAされます。
これはこれまでのビデオクリップ特集やライブ映像特集ではなく、ニューアルバム『MUSIC』にフォーカスした60分スペシャル番組。
貴重なレコーディング風景やメンバーインタビュー、その他あんなものもこんなものも、最新映像がてんこ盛り予定です。
この番組のディレクターは、"AIR"の異名をとる須藤中也さん。フジファブリックのドキュメント映像を撮らせたら右に出る者はいないというほど、メンバーの前で自らの存在をエアー化することが出来る稀有な才能の持ち主です。『CHRONICLE』のストックホルム映像日記DVDや、先日リリースされた完全生産限定『FAB BOX』のDVDも、もちろん中也さんがすべて深~く関わってます。
写真は、先日行われたインタビュー風景。自然光が降り注ぐハウススタジオで、メンバー一人一人にニューアルバムについて聞きました。
エアー中也さんのインタビューとあって、リラックスした雰囲気の中で取材は終了。
是非、発売日にCDを手に入れて、全曲聴いてから番組を見て下さいね!!
7/5発売の「音楽と人」最新号に、フジファブリックロングインタビューが掲載されています、というのは以前からお知らせしている通り。
もうご覧になった方も多いかと思いますが、この撮影は梅雨に入ったばかりの6月のある日、富士吉田にて行われました。
週間予報では、一時は雨80%までのぼりつめ、これは志村君のときと同じ雨ロケだ、と誰もが覚悟して臨んだ当日。
東京は朝になって雨が上がり、なぜか拍子抜けするような快晴。これはひょっとして晴れなのでは?と思って現地の天気予報をチェックするも、何度見ても「雨ときどき曇り」のマーク。
吉田の天気は変わりやすいからねぇーと言って車を飛ばしますが、相模湖を過ぎ、山梨県内に入っても日差しはどんどん強まるばかり。
結局、ピーカンとも言っていい真夏日となり、雪をかぶった富士山が地デジばりに?くっきり鮮やかに見える中、撮影は行われました。
今回の撮影のテーマは「会いに」。アルバム『MUSIC』が完成した直後、すぐに樋口さんに聴いてもらいたくて前号校了間際に半ば強引に時間をとってもらい(すみません)、通しで全曲聴いてもらった結果、即、富士吉田ロケというコンセプトをオファーされました。その理由は、インタビューに詳しく書かれているのでそちらを読んでいただきたいのですが、「会いに」という曲は、まさに空が広がって雲が溶け出すような暑い夏の日に、君の住む街に会いに行くよ、というストレートな想いを歌った曲です。
予報が大幅に外れての撮影日和に気をよくしてスタートしたロケでしたが、忠霊塔では黒いものに向かって飛んでくる小さな虫の大群の襲撃に遭い、3人(特にダイちゃん)は目も開けていられない過酷な撮影タイムに。
5年前の志村君の撮影と同じアングルで、というこだわりで撮影された扉のカットは、そんな様々な想定外の事態に翻弄されつつ押さえられたミラクルショットです。
アルバム『MUSIC』収録の10曲には、実に様々な楽器の音が重ねられています。
これはフジファブリックというバンドの常だとは思うのですが、そんな中でも今回初の試みとして、ジャケットに記載する演奏クレジットを曲ごとに入れてみました。
1曲目の「MUSIC」ではメンバー4人全員のコーラスがハーモニーを奏でていたり、意外な曲でソウ君が鍵盤楽器を弾いてたり、よく見ると新しい発見があると思うのでお楽しみに!
「MUSIC」という曲ではあえてドラムが入っていない、という話はLINER NOTESの曲目解説に書きましたが、刄田さんはこの曲ではシェーカーを颯爽と振ってます。
しかも現場で急にシェーカーどう?という話になったため、大至急スタジオの隣の野球グランドにダイちゃん先導チームが走り、ベンチ裏やらマウンド周辺やら?いくつかのポジションから砂を採取して戻り、フジファブリックのスタジオ現場に常備されているRED BULLの空缶に詰めて完成したという手作りシェーカーです。いい鳴り音です。
それ以外の曲で、時に鮮やかに、時に隠し味的に入っているパーカッションは、実は加藤さんが暗躍しているのですが、これに関してはなぜか表立ってクレジットされてません。
やはり、謎の多い男ですね。
最高傑作が出来ました、というのはダイちゃんこと金澤君の言葉。
僕達フジファブリックのニューアルバムとして聴いて欲しいというのは(山内)ソウ君の言葉。
音を出してるメンバーだけでなく、関わったスタッフ全員が同じ方向を向いていたからこそこういう形で完成させることが出来た、と加藤さん。
『MUSIC』、本当に素晴らしいアルバムが出来ました。
志村君が見ていた原風景を、作品として絶対に形にするという使命感にも似た思いが、関わった一人一人に不思議な力を授けてくれたのだと思います。
フジファブリックの一員であるかのように、すべての現場でバンドマジックを生み出してくれたサポートドラムの刄田綴色さん、準備段階も含めレコーディング全行程でエンジニアを務めてくれた浦本さん、入魂のミックスワークを全曲に施してくれた高山さん。
超多忙な皆さんが、1日1曲たりとも欠けることなくスケジュールを合わせていただくことが出来たのも、チーム・フジファブリックの授かったミラクルパワーなのかなと思っています。
昨日発売になったばかりの「ROCKIN' ON JAPAN」、7/5発売の「音楽と人」、7/14発売の「CD&DLでーた」をはじめ、ロングインタビューも続々と掲載されていきますので、このサイトと合わせてそちらの方も是非チェックしてみてくださいね。きっと、このアルバムをどうしても届けたいというメンバーの強い思いが伝わってくると思います。
タイトルの『MUSIC』、レコーディングの終盤で全員で集まって決めました。「普遍的、象徴的な言葉」が皆の共有したイメージ。
レコーディング、ミックス、アルバムタイトル、曲順、ジャケットデザイン。ディスカッションはあっても、決断には迷わない、フジファブリックは今もそんな頼もしいバンドです。
フジファブリック5枚目のオリジナルニューアルバム『MUSIC』スペシャルサイトがいよいよオープンしました。
これからアルバムにまつわるいろいろな情報をどんどんUPしていきたいと思っていますので、是非チェックしに来てくださいね!
昨日、サイトオープンに先駆けて、アルバムジャケ写を公開しました。このサイトも、ジャケットの世界観に基づいて作られていますので、少しだけ雰囲気を味わってもらえるのでは?と思います。
ところでジャケ写を見ると、どういう構造になっているのかな?と思う方も多いかもと思いますが…
「フジファブリック」というロゴを吹き付けてあるクラフト紙っぽい部分が、初回限定スペシャルパッケージでは、素敵な風合いのスリーブになっています。
ちょっと丈が短くて、下からCDケースに入ったジャケがちらりと顔を出している、という仕様なのです。
初回限定パッケージには、これに加えて【各メンバー楽器モチーフ4種ステッカーランダム封入!】がありますのでお楽しみに!
期間限定フジフジプライス盤(8月31日までの特別価格¥2,424)の方は、初回限定スペシャルパッケージのスリーブの部分がCDをぐるっと取り巻くワイドラベルになっていて、やはり下からジャケがちらりと顔を出してます。
隠れている部分の全貌も素敵なんですよ。こちらは発売日以降のお楽しみです!